厚生労働省の「職場あんぜんサイト」によると、令和5年の労働災害統計確定値では、合計755件の死亡事故のうち、建設業で発生した事故が223件、全体の29.5%を占めることが公表されました。
次いで、製造業が138件で全体の18.2%、陸上貨物運送業が110件で14.5%を占めています。
ご承知の通り、建設業は特に危険な業種です。
そして、この「危険」は、従事する労働者だけでなく、彼らを雇用している事業主にとっても非常に重大な問題です。
「労災保険があるから」「元請けがいるから」「ケガと弁当は自分持ちだから」「保険は個人で入っているから」「本人に過失があるから」など、さまざまな理由があるかもしれませんが、仕事中や通勤・退勤途中の災害が事業主の安全配慮義務違反や不法行為、使用者責任などが原因で発生した場合、事業主には損害賠償の義務が発生します。
例えば、年収500万円で35歳の独身の方が業務災害で亡くなった場合、その命の価値を計算してみると次のようになります。
500万円 × 20.389 = 1億194万円
ライプニッツ係数は、国土交通省の「自賠責保険・共済ポータルサイト」に掲載されている「支払基準・填補基準」に基づいています。
「労災保険にも加入しているので、すべての請求がこの金額にはならないだろう」と思うかもしれませんが、この年収の方の場合、差し引ける金額はおおよそ1370万円程度です(状況によってはさらに少なくなることもあります)。
また、これとは別に、2000万円を超える慰謝料が加わることがあります。
さらに、もし一生寝たきりの介護状態になった場合は、追加の費用も発生します。
将来的に受け取れる公的補償はありますが、事業主に責任がある場合、これらを差し引いて賠償金を設定することはできません。事業主が労災保険料を負担している意味が不思議に感じるかもしれませんが…
もし従業員が個人で生命保険などに加入していれば、上記の補償に加えて保険金を受け取ることができますので、請求しない人はいないでしょう。
会社、従業員、そしてその家族を守るためにも、準備を怠らず、適切な補償額にも十分注意を払うことが重要です。
